抄録
先天性QT延長症候群(LQTS)の薬物治療としては,β遮断薬のほかに,内向き電流を減少させるIb群Na+チャネル遮断薬やCa拮抗薬,外向き電流を増加させるK+チャネル開口薬などが考えられる.Ca拮抗薬のベラパミルは,単相性活動電位(monophasic action potential ; MAP)記録を用いた臨床研究や,動脈灌流心室筋切片標本を用いた実験的LQTSモデルによる検討からその有効性が報告されている.当院では主にβ遮断薬治療による外来経過観察中に遺伝子型が同定された先天性LQTS患者193例中11例(5.7%)で,torsade de pointes(TdP)の反復によるelectrical storm(ES)を認めた.ESのリスク因子としては,女性,発端者,LQT2型,失神・心停止・TdPの既往,Schwartzスコアー≧6,安静時QT時間≧ 500msecが,直接的な誘因としては,低K血症や低Mg血症があげられた.ES急性期の治療として,Ca拮抗薬のベラパミルの静注と持続点滴が有効であった.