抄録
ヒト線維芽細胞から作製される人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った研究が,さまざまな領域で注目を集めており,循環器領域でも再生医療・心疾患の病態解明・創薬ツールとして期待が寄せられている.われわれは末梢血中のT細胞を用いることにより,非侵襲的に1ヵ月でiPS細胞を樹立し,心筋細胞へと分化誘導させることに成功した.さらに現在,遺伝性QT延長症候群患者の血液から疾患モデル心筋細胞を樹立し,疾患の病態を解析する多施設共同研究を行っている.この解析では,各イオンチャネルに対する抗不整脈薬の直接作用の観察に加え,不整脈の疾患モデル心筋細胞を試験管内に樹立し,遺伝性不整脈の病態解析,薬物に対する効果判定を行っている.iPS細胞に関連する種々の技術は,遺伝性心筋疾患の病態解析や創薬,治療法開発に大きく寄与するものと考える.