抄録
これまでの不整脈の研究は,電気生理学的なアプローチが主流であった.しかし近年,心房細動(AF)の病態に炎症のプロセスが深く関与している可能性が示唆されている.それは,AF患者で見られる炎症マーカーの上昇や心房組織への炎症細胞浸潤といった観察研究だけでなく,動物モデルを用いた実証研究によっても支持されつつある.例えば,アレルギー反応や免疫応答にかかわる肥満細胞が心房線維化やAFの発症に重要な役割を果たしていることが,マウスのAF誘発モデルを用いることにより明らかとなった.肥満細胞は血行力学的負荷によって心房組織に浸潤し,線維形成性サイトカインである血小板由来成長因子(PDGF-A)の産生を増加させ,心房リモデリングやAFの発症を促進していた.今後,肥満細胞を起点とする炎症ネットワークを切り口とした,AFの病態解明とアップストリーム治療の開発へ向けた研究により,新たな展開が期待されている.