心電図
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33 巻, 2 号
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Editorial
原著
  • 重野 利彰, 河合 祥雄
    2013 年 33 巻 2 号 p. 101-112
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    【背景】12誘導心電図のJ波やST上昇は早期再分極所見とされ,アスリートに多く,心臓性急死との関連が問題となっている.一方,我が国の体育系大学生における早期再分極所見率や特徴は報告されていない.【目的】我が国の体育系大学生における早期再分極(J波)所見の頻度を非体育系大学生と比較検討する.【方法】本学スポーツ健康科学部学生(Sports群)362名,医学部学生(Control群)123名(18±1歳)の心電図において,2誘導以上でJ波が基線から0.1mV以上の上昇を示す所見を早期再分極と定義し,下壁誘導(II,III, aVF),側壁誘導(I, aVL, V4, V5, V6)および両誘導について比較した.【結果】早期再分極所見率はSports群がControl群に比べ高い傾向を示したが(14.6 % vs. 10.6%,p<0.26),有意差はなかった.また,下壁誘導(8.0% vs. 5.7%,p<0.40),側壁誘導(4.1% vs. 4.1%,p<0.97),両誘導(2.5% vs. 0.8%,p<0.26)も有意差はなかった.Sports群の早期再分極所見は短いQTc(OR, 5.42;95% CI, 1.58~18.64;p<0.01),心電図上の左心室肥大(OR, 3.35;95% CI, 1.75~6.39;p<0.001)および低い心拍数(OR, 2.32;95% CI, 1.23~4.39;p<0.01)が有意に関連していた.【結語】我が国の体育系大学生の早期再分極所見率は,非体育系大学生の所見率と統計上の差がなかった.
心電学マイルストーン
モデル解析の視点
第29回日本心電学会学術集会 第1回不整脈薬物治療サミット
  • 小野 克重
    2013 年 33 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    Vaughan-Williams分類は抗不整脈薬を4つのグループに分け,どのような機序で不整脈を抑制するかに関して総合的な薬理作用を説明するものである.一方,Sicilian Gambitは抗不整脈薬のすべての薬理作用を列記し,その強弱を明示することでそれぞれの抗不整脈薬の作用の違いを明らかにしている.アトロピン,アデノシンおよびジギタリスはVaughan-Williams分類では抗不整脈として認められていないが,Sicilian Gambitの提唱ではその特異な薬類作用によって抗不整脈薬としての価値が再評価された.現在,用いられている抗不整脈薬はイオンチャネルや受容体,あるいはトランスポーターを阻害して,不整脈の発生や持続を電気的に抑制する薬剤である.しかし将来的には,不整脈基質を改善するupstream治療の概念を考慮した薬剤が開発され,長期的に不整脈を管理することができるようになるかもしれない.
  • 和泉 徹, 村上 雅美, 庭野 慎一
    2013 年 33 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心房細動は,慢性心不全患者の1/3に合併する代表的な加齢関連疾患である.従来は,心不全の重症化・再発予防の観点からこれらの患者に対応してきたが,急性期のレートコントロールに成功し,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)ガイド下の治療が奏功するに従い,当初の課題は克服され,臨床像も異なるようになった.むしろ,長期予後における脳卒中・認知症・歩行困難などを回避するためのケア予防の先制介入が,少子・高齢化社会の医療課題となっている.リスクプロファイリングを確立し,アップストリーム治療を駆使して,ケア予防をも目指した診療体系が望まれている.
  • 三田村 秀雄
    2013 年 33 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)治療の薬理学的ターゲットはいまだに不明瞭で,しかも変化するため,既存の抗不整脈薬の効果は十分とはいえない.それでも,孤立性発作性AFに対してはレート治療よりもリズム治療が有効で,特にNa+チャネル遮断薬が奏功することは確認されている.発作時に自身で止めるためのpill-in-the-pocket(頓服)療法も,一定の注意を払えば有用である.持続性AFのリズム治療は心房筋のリモデリングのために困難であるが,様々な工夫が試みられている.除細動後に洞調律が長く続くほどリモデリングからの回復が進むため,その期間だけ抗不整脈薬で時間稼ぎをしたり,再発時に抗不整脈薬を早期に投与することによって,抵抗性のAFを停止できる場合がある.また,アミオダロンやベプリジルなどには,薬理学的に電気的リモデリングを逆転させる作用があることも認められている.最近では,デバイスやアブレーションなど非薬物治療の効果を補助するために,抗不整脈薬が併用されることもある.
  • 丸山 征郎
    2013 年 33 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    人類の歴史は,怪我,飢餓,乏しい塩,感染などとの闘いであったので,これらに対してカスケード(瀑状型)の反応系で装備して生存戦略としてきた.うち怪我に対する止血系は代表的なカスケード反応で,生体は怪我の部位を素早く認識して,その部位だけで凝血系(血小板系と凝固系)を活性化して,素早く「止血」することができる.この凝血系の血管内での誤作動は病的血栓に直結するので,通常は血管内皮細胞が凝血系を制御することで,閉鎖循環系内部での血栓は防止されている.逆に,血管内皮細胞が障害,あるいは消失した部位,すなわち怪我の部位だけで止血が成立する.この内皮細胞の抗血栓は,(1)PGI2, NO, ADPaseによる血小板活性化の防止,(2)トロンボモジュリン(TM),内皮細胞上のヘパリン様分子へのアンチトロンビンとTFPI(tissue factor pathway inhibitor)の結合,(3)t-PAの分泌とプラスミンの生成,など多重な仕組みによってかなえられている.しかし,メタボリック症候群などは血管内皮細胞を慢性的に障害し,病的血栓の原因となる.心内膜も血管内皮細胞と同じ抗血栓活性の機能を有しているが,リズミカルな拍動の消失やメタボリック症候群などによって,心房内が易血栓となってくる.これが心房細動の際の左心房内の血栓である.この場合に左心房内で血液が鬱滞することも,血栓発生に大きな役割を果たす.
  • 矢坂 正弘
    2013 年 33 巻 2 号 p. 148-155
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    新規経口抗凝固薬(NOAC)はワルファリンと比較して,吸収が速く,半減期が短く,食物の影響を受けず,薬物の相互作用が少なく,頻回なモニタリングが不要であり,脳梗塞予防効果は同等かそれ以上,大出血発現率は同等かそれ以下,頭蓋内出血は大幅に少ないため,非弁膜症性心房細動(AF)患者の脳梗塞予防にはNOACをまず考慮する.一方,ワルファリンの良い適応は,非弁膜症性AF以外の疾患で抗凝固療法の適応時,NOAC投与禁忌時,生理的凝固阻止因子欠損時などである.NOACであるダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンは,いずれもCHADS2スコア1点以上の非弁膜症性AFにおける脳梗塞予防の良い適応である.ワルファリンはCHADS2スコア2点以上が良い適応である.CHADS2スコア0点の場合,65歳以上,大動脈プラーク,心筋梗塞の既往,心筋症のいずれかに該当すれば,その他のリスクとして抗凝固療法を考慮する.
心電学フロンティア2012(第47回理論心電図研究会) 炎症と不整脈・Mgの多彩な心筋作用
  • 古川 哲史
    2013 年 33 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    近年,多くの慢性疾患の病態発現の基盤に,慢性で軽度の炎症が存在することが注目されている.不整脈でも,特に心房細動(AF)では高感度CRP陽性率が高いこと,IL-6の遺伝子多型が開心術後のAF発現と相関すること,などから炎症との関連が示唆されている.慢性疾患では,Virchowの5主徴を伴う古典的な炎症(classical inflammation)とは異なった,自然炎症(homeostatic inflammation)が関与する.本稿では,自然炎症とは何か,自然炎症がどのように心房リモデリングをもたらすのかについて概説する.
  • 赤澤 宏, 小室 一成
    2013 年 33 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    これまでの不整脈の研究は,電気生理学的なアプローチが主流であった.しかし近年,心房細動(AF)の病態に炎症のプロセスが深く関与している可能性が示唆されている.それは,AF患者で見られる炎症マーカーの上昇や心房組織への炎症細胞浸潤といった観察研究だけでなく,動物モデルを用いた実証研究によっても支持されつつある.例えば,アレルギー反応や免疫応答にかかわる肥満細胞が心房線維化やAFの発症に重要な役割を果たしていることが,マウスのAF誘発モデルを用いることにより明らかとなった.肥満細胞は血行力学的負荷によって心房組織に浸潤し,線維形成性サイトカインである血小板由来成長因子(PDGF-A)の産生を増加させ,心房リモデリングやAFの発症を促進していた.今後,肥満細胞を起点とする炎症ネットワークを切り口とした,AFの病態解明とアップストリーム治療の開発へ向けた研究により,新たな展開が期待されている.
  • 中込 明裕, 草間 芳樹, 新 博次
    2013 年 33 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)患者の心房にはマクロファージの浸潤,接着因子,炎症性サイトカイン,ケモカインの発現が高率に認められるため,AFの発症に炎症の関与が示唆される.Okazakiらは,ラットの腹腔内にlipopolysaccharide(LPS,グラム陰性桿菌の細胞壁を構成,炎症性サイトカインや血栓に関与する組織因子を誘発)を投与するとAFが誘発されることを報告し,AFの発症とLPSの関係を示唆した.メタボリックシンドローム(MS)患者のAF発症リスクは高率であるが,その機序は明らかではない.MS患者のLPS濃度は健常者に比して有意に高値であり,単球の産生するケモカイン,組織因子(TF)活性が健常者に比べて有意に高値を示したことより,MS患者のAF発症および血栓形成にはLPS,ケモカイン,TFの関与が示唆された.また,冠攣縮性狭心症の心室頻拍,心室細動の発症にも炎症反応の関与が示唆された.
  • 小西 真人, 田代 倫子, 井上 華
    2013 年 33 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    細胞内Mg2+濃度([Mg2+i)は,細胞外からの受動的な流入と細胞外への能動的な汲み出し輸送のバランスによって維持されていると考えられる.私たちは哺乳類の心筋細胞を使って,細胞膜を介するMg2+輸送の機能解析を行ってきた.ラット心室筋細胞の[Mg2+iを蛍光指示薬furaptraで測定したところ,静止時の[Mg2+iは0.7~1.0mMであった.細胞を無Mg2+高K+溶液に浸漬して細胞内Mg2+を減少させた後,細胞外Mg2+濃度を1mMに戻すと,[Mg2+iは指数関数的に上昇し,静止レベルに回復した(Mg2+流入).逆に,高Mg2+低Na+液に浸漬して細胞内にMg2+を負荷した後,細胞外にNa+を加えると[Mg2+iは速やかに低下し,静止レベルに戻った(Na+依存性Mg2+汲み出し輸送).これらの輸送の特性により生理的[Mg2+iは静止レベル付近に維持されると考えられるが,輸送体の機能が低下する病態においては[Mg2+iが大きく変動する可能性がある.
  • 柳(石原) 圭子
    2013 年 33 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    マグネシウムイオン(Mg2+)は体内ではナトリウムイオン(Na+),細胞内ではカリウムイオン(K+)に次いで二番目に多い陽イオンであり,体内のMg2+不足は不整脈,虚血性心臓病,心不全などの心血管疾患の病態にかかわる可能性が古くから指摘されてきた.不整脈との関連では,硫酸マグネシウムの静脈内投与がQT延長に伴うトルサード型心室頻拍を抑制することが知られており,一方で高Mg2+血症は房室ブロックや心停止を引き起こす危険性がある.そのメカニズムには細胞外から心筋の膜電位やイオンチャネルへの作用以外に,何らかの経路でMg2+が細胞内に流入してイオンチャネル機能を修飾する可能性が考えられる.生理的濃度の細胞内Mg2+(Mg2+i)にはL型Ca2+チャネルを抑制し,緩徐活性型遅延整流性K+電流(IKs)や内向き整流K+電流(IK1)を増加させる作用がある.したがって,Mg2+流入が心室筋活動電位の持続時間を短縮して活動電位延長に伴う早期後脱分極,さらにはトルサード型心室頻拍を抑制する可能性がある.またMg2+iが誘発するIK1トランジェントは,急速活性型遅延整流性K+電流(IKr)が減少する際に,再分極予備能として早期後脱分極発生を抑制することがシミュレーションによって示されている.
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