2016 年 36 巻 4 号 p. 328-333
心臓交感神経は,心筋における神経成長因子やセマフォリン3aの発現によって,その神経分布が規定されていることが明らかとなっている.これらの因子の発現パターンは病的状態または遺伝的要因によって変化し,それに伴って心臓交感神経の分布が変化し,不整脈や突然死の原因となることが示唆されている.また,心筋細胞と心臓交感神経の間には,さまざまな神経体液性因子を介したクロストークが存在することが明らかとなり,心不全や不整脈の病態生理にかかわる交感神経線維の軸索伸張,除神経,機能変化(交感神経から副交感神経)といった現象も分子生物学的に解明されつつあり,心臓交感神経自体の解剖学的,機能的変化による病態修飾が存在すると考えられている.さらに,多臓器連関という概念から,自律神経系に介入する新しい治療戦略も展開され,その多面的効果が期待されている.