心電図
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Mobitz II型のAHブロックの1例
井野 威本間 博小野沢 成子岡野 和弘早川 弘一
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1981 年 1 巻 2 号 p. 186-192

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抄録
症例は65才女性。労作時の息切れを主訴に来院し, Holter心電図を記録したところ深夜にMobitz II型ブロックが出現した。心拍数55/分で1: 1伝導を示す自発リズムの際のHis束心電図ではAH120msec, HV30msecであった。なお, His束電位記録部位からの刺激と心室波間も30msecであった。70/分の遅い心房ペーシングにて3: 1のAHブロックが容易に出現。心房Extrastimulus法では刺激間隔の逐次短縮にてもAH時間の延長はまったくみられず, 900msecの刺激間隔にてAHブロックを呈した。以上の諸検査によりAH間のMobitz II型プロックと診断された。一方, Atropine投与, 運動負荷を行ったところ心房収縮数は増加したが, 房室伝導は改善しなかった。その後約2週間にわたる一時的心室ペーシングを行っていたところ, 心拍数78/分で1: 1伝導を示す自発リズムが出現し, 2回目の電気生理学的検査を行った。この時には90/分の心房ペーシングまで1: 1伝導を示し, 心房Extrastimulus法でも刺激間隔を短縮するにつれAH時間の漸次延長パターンがみられ, AH間伝導が回復したとみなされた。いずれにしても本症例の発病初期にみられたAH間のMobitz II型ブロックは一般にみられるAHブロックと異なり, Atropine投与, 運動負荷により房室伝導の改善がみられず文献的にも極めて稀な例と考えられ, さらにそのブロックの部位はAH間でも房室結節より遠位でしかもHis束に近い部位に存在することが推察された。
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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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