日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-80
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一般演題 ポスター
肝発生過程におけるcytochrome P450 3Aの発現プロファイルおよびそのzonation形成に関する研究
*鳩貝 壌北岡 諭落合 和
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抄録

[目的]Cytochrome P 450(CYP)3Aは肝臓や小腸での発現が高く、多くの医薬品の代謝を担う酵素である。また、肝臓におけるCYP3Aの局在は、中心静脈の周囲に強い発現を示すzonationと呼ばれる特徴的な発現勾配を形成している。しかしながら、これまでに我々は胎児期の肝臓では、このzonationが形成されていないことを明らかにした。妊娠中の薬物代謝を評価する上で、胎児期の肝臓においてCYP3Aが発現する時期と場所は非常に重要になるものと考えられる。そこで本研究では、マウスの肝発生過程においてCYP3Aのzonation形成がいつから起こるのかを検討した。

[方法]CYP3Aは、分子種間のホモロジーが高く、抗CYP3A抗体による解析では分子種を特定できない。そこで我々は、2種の抗CYP3A抗体を用いて比較することで、それぞれの抗体が認識する分子種の解析を行った。その後、それらの抗体を用いたwestern blotting法でそれぞれのCYP3A分子種の発現する時期を特定した。また、マウスの胎児および新生児から肝臓を摘出後、組織切片を作成し、抗CYP3A抗体で免疫組織化学染色を行い、CYP3Aの発現場所を解析した。

[結果]肝臓におけるCYP3Aの局在は、胎児期ではほぼ均一に発現しており、生後7日目ごろから徐々にzonationが形成され始めることが明らかとなった。また、western blotting法の解析から、CYP3A16は胎児期から発現が認められ、CYP3A11は胎生期および生後初期の肝臓では発現がほとんど見られず、生後7日目から発現が始まっていた。これらのことから、胎児期の肝臓に見られたCYP3A分子種の発現はCYP3A16の発現によるものと考えられる。以上の結果より、胎児期には薬物代謝活性の低いCYP3A16が優位に発現しているが、zonationの形成は見られないこと、また、乳児期からはCYP3A11が優位に発現してzonationが形成され始めることが明らかとなった。

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