抄録
経カテーテル直流通電法により房室ブロック作成術について実験的に検討した.対象は雑種成犬15頭で電極カテーテルを右房と房室接合部に留置し, 電気生理学的検査により術前の房室伝導能を評価後, 房室接合部に置いたカテーテルと背部皮下に置いた対極板との間で直流通電を試みた.1回通電量は20~100J (20J: 5頭, 30J: 3頭, 50J: 5頭, 100J: 2頭) とし, 完全房室ブロック (CAVB) が誘発されるまで通電を重ねた.通電直後に心室細動を生じ死亡した1頭を除く14頭において通電30分後 (急性期) と飼育4週後 (慢性期) の房室伝導能を比較検討し, うち2頭に対して病理学的検索を施行した.14頭全例にCAVBの誘発が可能であったが, 急性期もCAVBであったものは9頭であり, さらに慢性期までCAVBが持続したものは5頭であった.約2J/kgの通電でCAVBの誘発が可能であったが, 慢性期まで持続するためにはより高エネルギーの通電が必要であると考えられた.