抄録
日常生活中の心筋局所で起きる一過性ST偏位を検出する目的で, 既存のホルター心電図記録器の付加装置を作成した.付加装置は, 時間分割法による誘導切り替えで左前胸部を中心に最大30点の単極誘導記録を可能にした.なお, 体位センサーを用いて, 体位変換による一過性ST偏位を除外した.そして, 10点誘導方式による観察では, 虚血性心疾患患者65例中23例の各誘導点における一過性ST偏位の検出率を検討した.また, 30点誘導方式のマツプ作製では, 12例中6例について心筋虚血の分布を描いた.その結果, 10点誘導方式による観察の23例中2例でOM5誘導に相当するV5誘導において, 一過性心筋虚血を見逃した.一過性の局所心筋虚血を観察するには, 現行のV5誘導点に加え, その右, あるいは下の誘導を含む2~3誘導が望ましい.また, 誘導点を細かく移動することが可能なホルター心電図記録器を用い, マップを描くことにより, 日常生活の運動負荷による心筋虚血の拡大・縮小が観察できる.