心電図
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冠動脈閉塞部位とベクトル心電図 (総点数法による判別法)
鈴木 恵子戸山 靖一
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1992 年 12 巻 2 号 p. 199-204

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抄録

心筋梗塞の冠動脈閉塞部位がどの冠動脈にあるか, さらにそれが冠動脈のどのsegmentにあるかを非観血的検査法, 特にベクトル心電図でどこまで推定できるかを, 戸山, 鈴木の総点数法によって試みた.対象としたのは後下壁梗塞では閉塞部位が右冠動脈にあるか左回旋枝にあるかを, 下壁梗塞では右冠動脈のSeg1かSeg2かを, 前壁梗塞ではSeg6かSeg7かをみた.この総点数法はベクトル心電図の各パラメータことに点数を算出し, 各症例ことの総点数を出し, 冠動脈造影所見による閉塞部位との適中率が最もよい判別点を決め, それによって後下壁梗塞, 下壁梗塞, 前壁梗塞の適中率を求める方法である.この総点数法は後下壁梗塞例でのretrospective studyとprospective studyにより, その再現性が確かめられている.
その結果, 後下壁梗塞では冠動脈造影所見による閉塞部位との適中率はretrospective studyでは86.7%, Prospeotive studyでは85.0%とかなり高い適中率が得られた.下壁梗塞ではベクトル心電図のみでは適中率は73.3%であったので, ベクトル心電図の総点数と体表面電位図から求めた総点数との和により判別を行ったところ, 80.6%の適中率を得た.これに対して, 前壁梗塞ではベクトル心電図のパラメータを工夫することにより, 適中率は78。8%になった.すなわち, 一つの冠動脈でのSegment単位の閉塞部位を推定するのにはまだ十分といえない点があるが, 太い冠動脈での判別にはかなりよい成績が得られた.なお, これらの検討を通して, この総点数法は二つの群を判別するのに簡単で, かつ有用な方法であると考えられた.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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