心電図
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12 巻, 2 号
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  • 新 博次, 遠藤 康実, 八島 正明, 加藤 貴雄, 岸田 浩, 早川 弘一
    1992 年 12 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最近の汎用自動診断心電計2機種による自動診断精度につき検討した.
    Positve predictability (PPD) はWPW症候群で69~88%, 心房細動60~93%, 1度房室ブロック92~98%であった.不整脈の診断精度はP波の認識精度に問題があり, 全般にPPDが低下し, ことに上室性期外収縮ではfalse negativeが多くみられた.心筋梗塞の診断は, 側壁梗塞の診断精度が他の部位と比し劣る傾向であった.異常Q波の感度は100%であったが, PPDは57%と低値を示し, R波増高不良は感度55%, PPD92%であり, 心筋梗塞の部位別診断精度に反映しているものと考えられた.
    正常範囲内と診断された1, 139例のPPDは98%であり, そのfalse positveには臨床上問題となる所見は含まれず, 正常範囲内と表示された場合の信頼性は高いものと考えられた.
  • 渡部 良夫
    1992 年 12 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    不整脈の診断論理は, 特殊伝導系細胞の自動能による刺激生成, 活動電位発生に伴う興奮伝導と不応期といったいくつかの電気生理学的特性をもとに組み立てられる.そうした論理中, (1) P波の現われ方による洞調律の同定法, (2) PとQRSが同頻度で現われPR時間が一定なら単一の歩調取り機構を考え, (3) PとQRSの出現頻度が異なり, しかも各々の周期が一定の場合は房室解離状態を, (4) 心房と心室の頻度が異なり, 高頻度の方が一定, 低頻度の方が変動するときは, 前者からの伝導ブロックをそれぞれ疑うこと, (5) 基本調律が洞性のときに突然周期が短縮すれば期外収縮が, (6) 基本調律よりも長い間隔で出る心拍では補充収縮が示唆されること, (7) 異所性心拍が連続出現するときは, その頻度により発作性頻拍, 非発作性頻拍, 異所性調律を鑑別すること, (8) 不応期の知識を用いた伝導障害や心室内変行伝導の判定, (9) 歩調取り細胞の復原周期, (10) 不整脈解析におけるP波同定の重要性, などの諸点を実例を用いて解説した.
  • 平井 真理, 鈴木 朗, 村上 敦, 富田 保志, 足立 昌由, 市原 義雄, 山内 一信, 林 博史, 鷹津 文麿
    1992 年 12 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影, 左室造影を施行した38症例 (陳旧性前壁梗塞24例, 非梗塞例14例) において右室ペーシングにより左脚ブロックを模し, その際体表面電位図 (MAP) , 12誘導心電図 (EOG) およびベクトル心電図 (VOG) を同時記録し, これら3者におけるQRST値の心筋梗塞診断, および左室機能の推定について比較検討した.MAPおよびEOGにおいては, 正常範囲を下回る誘導のQRST値と正常平均との差の総和 (ΣDMおよびΣDE) を, VCGについてはVentricular gradient (VG) のAzimuth (AZM) , Elevation (ELE) , Magnitude (MAG) を算出した.ΣDMとΣDEおよびAZM, ELEとMAGは陳旧性前壁梗塞において正常興奮伝播と右室ペーシングにより模した左脚ブロックとの間で有意な相関を認めた.陳旧性前壁梗塞の有無の診断におけるMAP, ECGおよびVCGの正診率はそれぞれ82%, 89%および79%であった.右室ペーシング時のΣDM, ΣDEおよびAZMはAsynergy Indexと有意な相関を示したが, ΣDMの相関が最も優れていた.MAP, ECGおよびVCGのQRST値から得られた指標は, 左脚ブロックに合併した前壁心筋梗塞の有無および左室機能の推定に有用な情報を提供する可能性が示唆された.
  • 伴野 祥一, 長沼 文雄, 岩崎 勉, 村田 和彦
    1992 年 12 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患151例を対象として, 負荷201TI心筋シンチグラフ (SPECT) , ECG, VOGの心筋虚血領域の判定の差異について検討した.虚血と判定したのは, SPECTで142件, ECGで140件であった.両法の判定が一致したのは117件で, 両法とも虚血と判定したうちの84%であり, 虚血についての感度は両法ほぼ同程度であった.しかし, 負荷ECGでST低下のみられた誘導部位はSPECTによる心筋虚血部位とは対応せず, ECGでは部位診断は不可能であった.左室造影をgoldstandardとした心筋梗塞数は73例で, SPECTの梗塞診断率はECGに比較して優れていた (P<0.001) が, VCGとは有意の差はなかった.梗塞部位の判定でもSPECTはECGより下壁, 後壁の診断において優れており, 診断感度では有意の差 (P<0.05) を認めた.一方, VCGとSPECTの診断感度はほぼ同様であった.診断特異度, 正診率は3法いずれも良好な成績であり, 特にECGの診断特異度はいずれも100%の成績であった.
  • 斎藤 大治, 白木 照夫, 原岡 昭一
    1992 年 12 巻 2 号 p. 182-189
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症41例を対象に, 肥大部位の違いがフランク法ベクトル心電図に与える影響について検討した.肥大部位は断層心エコー図およびMRIを用いて判定し, 最大肥厚部位によりSeptal (S) , Anterior (A) , Lateral (L) , Posterior (P) およびApical (AP) の各群に分類した.最大ORSベクトルの大きさには各群間に差が認められなかったが, 最大QRSベクトルの方向ではS-群は-180~-60°の範囲に, P-およびL-群は-60~0°に, AP-群は0~+90°の範囲に, それぞれ約70%の症例が分布し, S-群を除いて肥大部位と最大QRSベクトルの方向は一致した.QRS環はS-群では複雑な回転を示す例が多かったが, 他の群ではほぼ正常な回転を示した.最大Tベクトルは, P-群が他の群よりも前方に位置し, AP-群は他の群よりも大きかった.以上より肥大型心筋症の肥大部位は主として最大QRSベクトルの方向に反映されていることが明らかになるとともに, 中隔肥大群は他の群よりも不均一な群であることが推測された.
  • 冷牟田 浩司, 山鹿 昭彦, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳
    1992 年 12 巻 2 号 p. 190-198
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    冠動脈拡張術 (PTCA) で冠動脈内に留置するガイドワイヤー先端で記録される心電図は局所心筋の電位を反映すると考えられる.その冠動脈内心電図 (ic ECG) の急性心筋虚血の指標としての有用性と肥大型心筋症の異常Q波の発現機序をic ECGを用いて検討した.PTCAの急性冠閉塞時のST上昇は体表面12誘導心電図 (12 lead ECG) よりic ECGで高頻度に出現し, 特に左回旋枝病変例でその傾向は顕著であった.12 lead ECGで異常Q波を認める肥大型心筋症の左前下行枝でis ECGを記録すると, Q波を認める例と認めない例が混在した.ic ECGでQ波を認める例では左室壁運動異常と心筋シンチグラムでの灌流欠損が認められ, 心筋の起電力消失が推察された.ic ECGでQ波を認めない例では心基部中隔上でR波の増高を認め, 異常肥大に伴う初期ベクトルの増大がその機序と推察された.以上より, is ECGは心筋虚血の鋭敏な指標であり, 異常Q波などの心電図異常の解析に有用である.
  • 鈴木 恵子, 戸山 靖一
    1992 年 12 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞の冠動脈閉塞部位がどの冠動脈にあるか, さらにそれが冠動脈のどのsegmentにあるかを非観血的検査法, 特にベクトル心電図でどこまで推定できるかを, 戸山, 鈴木の総点数法によって試みた.対象としたのは後下壁梗塞では閉塞部位が右冠動脈にあるか左回旋枝にあるかを, 下壁梗塞では右冠動脈のSeg1かSeg2かを, 前壁梗塞ではSeg6かSeg7かをみた.この総点数法はベクトル心電図の各パラメータことに点数を算出し, 各症例ことの総点数を出し, 冠動脈造影所見による閉塞部位との適中率が最もよい判別点を決め, それによって後下壁梗塞, 下壁梗塞, 前壁梗塞の適中率を求める方法である.この総点数法は後下壁梗塞例でのretrospective studyとprospective studyにより, その再現性が確かめられている.
    その結果, 後下壁梗塞では冠動脈造影所見による閉塞部位との適中率はretrospective studyでは86.7%, Prospeotive studyでは85.0%とかなり高い適中率が得られた.下壁梗塞ではベクトル心電図のみでは適中率は73.3%であったので, ベクトル心電図の総点数と体表面電位図から求めた総点数との和により判別を行ったところ, 80.6%の適中率を得た.これに対して, 前壁梗塞ではベクトル心電図のパラメータを工夫することにより, 適中率は78。8%になった.すなわち, 一つの冠動脈でのSegment単位の閉塞部位を推定するのにはまだ十分といえない点があるが, 太い冠動脈での判別にはかなりよい成績が得られた.なお, これらの検討を通して, この総点数法は二つの群を判別するのに簡単で, かつ有用な方法であると考えられた.
  • 松原 由朗, 渡辺 佳彦, 長谷川 義武, 吉田 哲, 三ツ口 文寛, 安保 泰宏, 中野 博, 近藤 武, 野村 雅則, 水野 康, 服部 ...
    1992 年 12 巻 2 号 p. 205-215
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術 (OABG) 前後に心表面・体表面電位図を記録し, 心筋viabilityの評価を試みた.対象はCABGを施行した患者13例である.心表面電位図は43誘導のsockを用い, 体表面電位図は山田らの方法でCABG前後に記録した.虚血心筋領域を知るため, CABG前後に201Tl-心筋シンチグラフィ (MSG) を施行した.OABG前後のr波変化を検討した.心表面・体表面ともにCABG後r波が増高した3例と心表面でr波が増高し体表面で不変であった4例はMSGでも改善を認めた.心表面・体表面ともに不変の4例はMSGでも不変であった.心表面・体表面ともにr波減高した2例は, MSGでも悪化を認めた.MSGと電位図の対比から, CABG前の心表面単極誘導波形にてわずかでもr波があれば心筋viabilityが存在した.心表面電位図は体表面電位図からは得られにくい局所の微小電位を知ることができ, 心筋viabilityの判定が可能であった.したがってCABG前に心表面電位図記録が必要と思われる.
  • 磯本 正二郎, 深谷 眞彦, 谷川 宗生, 香江 篤, Osmar A. Centurion, 橋本 隆明, 嘉手納 満雄, 清水 昭彦, ...
    1992 年 12 巻 2 号 p. 216-223
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動 (PAF) 群46例 (59.0±13.1歳) および対照群42例 (49.0±17.9歳) について洞調律時の右房内12ヵ所のマッピングにより得られた心房電位 (A波) に対する年齢の影響を検討した.A波幅≧100msecまたは棘波数≧8個を異常A波と定義すると, (1) 各年代の異常A波出現頻度, (2) 1症例中の異常A波数, (3) 各症例の最長A波幅および (4) 最多棘波数はいずれも対照群に比べてPAF群で高値であったが, PAF群および対照群ともに年齢が高くなるほど高値を示した.これらの指標と年齢との回帰直線の傾きもPAF群で大であった.以上のことから, 心房筋の電気生理学的異常はPAFの既往の有無にかかわらず加齢とともに亢進し, PAF群ではその異常の程度や異常を認める領域はさらに増強, 拡大しており, 年齢により受ける影響も強いと考えられた.すなわち, 心房筋受攻性はPAF群で亢進しているが, 加齢によっても亢進することが示唆された.
  • 綱川 宏, 小林 千春, 川端 美緒, 日鼻 靖, 西山 玄洋, 真島 三郎, 春見 建一
    1992 年 12 巻 2 号 p. 224-233
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞慢性期の心室頻拍の発生にリエントリーは重要な役割を果たし, 局所興奮伝導遅延と不応期の不均一性の増大を基礎とするとされる.これらの現象を加算平均心電図および体表面QRST area mapで評価し, 心室頻拍例の鑑別を試みた.対象は心筋梗塞慢性期に持続性心室頻拍を生じた12例 (A群) と合併しない55例 (B群) で, 加算平均心電図 (SAE) と体表面QRST area mapを記録し, 後者の不均質性を非双極子性により判定した.SAEのf-QRSとD40はA群で有意に大で, V40は小なる傾向にあった.Late potentialはA群で50%とB群15%に比し高率に検出された.QRST area mapの非双極子性はA群で有意に高く, 正常者の平均+2SD以上の例はA群で67%とB群27%より高率であった.両者の組み合わせによりA群を感度92%, 特異度60%で鑑別しえた.非観血的な興奮伝導遅延と再分極異常の検出は心筋梗塞慢性期の心室頻拍例の鑑別に有用なこと: が示唆された.
  • 高橋 潔, 田辺 晃久
    1992 年 12 巻 2 号 p. 234-247
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    雑種成犬30頭を利用し, 冠動脈結紮 (冠結紮) 2時間後の虚血心に対する心臓交感神経刺激と遮断の心室不応期, その不均一性への影響を検討した.神経刺激は心臓交感神経腹外側枝 (VLCN) を, 遮断はbunazosin, propranolol投与で行った.第一と第二鈍縁枝を結紮した.不応期はS1~S2法により, 虚血域8点, 境界域2点, 正常域2点で測定した.
    冠結紮前, VLCN刺激で不応期は虚血相当域のみ短縮した (p<0.01) .冠結紮後, 虚血域不応期は有意に短縮した (p<0.01) が, VLCN刺激でそれ以上短縮しなかった.虚血域で短縮した不応期はbunazosinで延長 (p<0.01) , VLCN刺激で再び短縮した (p<0.01) .したがって, 虚血-非虚血域間の不応期差はbunazosinで縮小し, VLCN刺激で増大した.Propranolol追加後の不応期は3領域とも有意に延長 (各p<0.01) , 虚血-非虚血域間の不応期差は再び増加した.
    Propranolol先行投与群では3領域とも不応期は延長し (各p<0.01) , 虚血-非虚血域間の不応期差は縮小しなかった.Propranololで延長した虚血域不応期はVLCN刺激で短縮しなかった.Bunazosin追加で虚血域不応期は延長傾向を示したが有意でなかった.
    以上より, α1遮断薬, β遮断薬とも虚血域の不応期を延長するが, 交感神経刺激で前者は再度短縮し, 後者は短縮しなかったことから, 虚血心筋ではβ受容体が重要と考えられた.一方, 虚血-非虚血域間の不応期差の縮小という点ではα1遮断薬が勝ると考えられた.
  • 西崎 光弘, 太田 剛弘, 有田 匡孝, 桜田 春水, 平岡 昌和
    1992 年 12 巻 2 号 p. 248-258
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    自然発作時に2種類のQRS波形を呈した心室頻拍 (VT) を認めた陳旧性心筋梗塞の1例に電気生理学的検査を行った.検査時, 10種類の形状の持続性VTが認められたが, 病歴の形状と一致したVTは1種類のみであった.洞調律時に分裂電位 (fractionated electrogram: FE) が認められた左室前壁中隔心尖部側 (LV) の電位を5種類のVTで記録でき, うち3種類のVTではそれぞれQRSの開始, 終末部および直前にFEが観察された.洞調律時にLVから周期を変えて頻回刺激を加えると, FEがQRSに先行していたVTと同一のQRS波形のみが得られ, さらにVT中にLVから頻回刺激を加えるとentrainment without fusionが認められた.この際, VT中のFEの開始からQRSまでの時間は洞調律時およびVT中の刺激からQRSまでの時間とほぼ一致した.残る2種類のVTでは連続性電位が認められ, うち1種類のVTで形状の変化に伴い連続性電位の消失が記録された.
    以上, 複数リエントリー回路の関与が考えられpleomorphic VTにおいて極めて多様なFEが記録された例を報告した.
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