抄録
WPW症候群症例で, 副伝導路 (AP) の部位別にみた房室回帰性頻拍 (AVRT) 誘発率の相違を比較検討した.対象は心臓電気生理学的検査を受けたWPW症候群100例で, 内訳はAPが心中隔にある17例と, その他の部位にある83例 (左室69例, 右室14例) であった.心中隔にAPがある例では17例中9例52%にAVRTが誘発されたのみで, 左室にAPがある69例中59例B5%にAVRTが誘発されたのと比べ有意に低値であった (p<0.01) .また右室にAPがある14例中11例78%でAVRTが誘発されたことと比べても, 有意差はみられないものの低値を示した.室房伝導の有無に関しては, 心中隔例では11例中6例55%に認められたのみで, 左室例の43例中39例91%, 右室例の13例中全例100%に室房伝導を認めたのに比べ有意差がみられた (p<0.05) .WPW症候群のAVRT誘発率に関する条件として, 良好な室房伝導の存在や, APと房室結節の不応期の相対的関係の重要性が指摘されているが, APの部位も影響することが示唆された.