抄録
機械的伸展に伴う心筋細胞内Ca2+動態の変化を解析し, そのメカニズムについて考察した.新生児ラットの心室筋細胞を無蛍光シリコンラバーに培養し, このラバーを手動マニピュレータで伸展させることにより細胞に機械的伸展を加え, この際の細胞内Ca2+濃度 ( [Ca2+] i) をFura-2蛍光強度比として測定した (温度22~24℃) .ラット培養心室筋細胞の持続的伸展に伴う [Ca2+] iの変化には, 伸展直後 (30秒~2分) の一過性かつ高度の増加 (初期相) と, 定常状態における (5~10分) 軽度の増加 (後期相) の2相が認められた.初期相の形成には, ガドリニウムにより抑制される伸展活性化イオンチャネルが関係した細胞外からの一過性Ca2+流入増加が関与していると推定された.後期相には, Ca2+チャネルおよびガドリニウムにより抑制される伸展活性化チャネルを経由しない, 細胞外からの持続的なCa2+流入の増加が関与しているらしい.