抄録
本研究は肥大心に高頻度に認める不整脈の発生の背景となるイオン電流変化と, その機序を明らかにする目的で慢性左室圧負荷の心筋イオン電流系に与える影響を検討した.腹部大動脈を部分的に狭窄し, 圧負荷を加えた左心室から単離した心筋細胞では活動電位幅が延長し, そのプラトー相のamplitudeが低下していた.Ica, Lはsham-operation群・aorta-banding群で有意な差を認めなかった.IKの末尾電流はaorta-banding群で有意に減少しており, この減少はIKの非常に速く活1生化される成分 (IKP) , および比較的速く活性化される成分 (IKr) を抑制したことが主体であった.一方, Itoを認める細胞の出現頻度は増加しており, その4-AP感受性成分・Ca2+感受性成分の大きさは各膜電位で増大していた.IKの減少は肥大心筋に認める活動電位幅の延長を, Itoの増大は活動電位プラトー相のamplitudeの低下を反映するイオン電流変化と考えられる.