心電図
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運動負荷試験における事故に関する検討―全国107施設調査結果―
武者 春樹中村 俊香國島 友之村山 正博太田 壽城大津 文雄川久保 清岸田 浩久保田 功外畑 巌平井 真理
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キーワード: 運動負荷試験, 事故
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1997 年 17 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

全国107施設の運動負荷試験に関するアンケート調査により, 推定累積運動負荷試験1, 779, 352件 (マスター2階段試験951, 512件, エルゴメーター法215, 972件, トレッドミル法611, 868件) における事故について検討を行った.死亡事故6件, 入院を要する重篤事故37件であり, 検査10, 000件当たりの事故率は, 死亡0.034, 心筋梗塞発症0.129であった.死亡を含む重篤事故の基礎疾患が明らかであったのは31件であり, 内訳としては心筋梗塞13%, 不安定狭心症13%, 狭心症32%であり, 肥大型心筋症, 拡張型心筋症, 弁膜症などその他が42%であった.事故の内容 (総数40件) は, 心筋梗塞発症57.5%, 不安定狭心症12.5%, 持続性ST上昇10%, その他20%であった.事故の原因としては, 報告のあった33件の中で過度の虚血6%, 過度の負荷15%, 不安定狭心症に負荷を行った6%, その他15%であり, 原因不明が58%を占めた.過去に事故の経験の有無による運動中止基準の比較では, 運動中止心拍数および収縮期血圧が事故の経験ある施設において年齢別推定最大心拍数85%以上や収縮期血圧250mmHg以上の設定など中止基準の設定が高い傾向を認めたが, 運動中止STレベルには差を認めなかった.本邦における運動負荷試験に伴う事故の発生頻度は, 過去の諸外国の報告よりは少ない傾向であったが, 事故の原因として不安定狭心症に負荷を行った例や過剰負荷の例が認められ, 事故の防止のため負荷試験の適応と禁忌, 運動中止基準の遵守がより必要と考えられた.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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