心電図
Online ISSN : 1884-2437
Print ISSN : 0285-1660
ISSN-L : 0285-1660
I群抗不整脈薬による催不整脈作用: 上室性頻脈性不整脈に伴うQRS延長によって生じた多形性心室頻拍の臨床的および心電図学的検討
松尾 清隆栗田 隆志田口 敦史清水 渉須山 和弘相原 直彦鎌倉 史郎下村 克朗
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 17 巻 1 号 p. 46-54

詳細
抄録

IaまたはIc群抗不整脈薬によりQRS延長に伴う多形性心室頻拍 (PVT) を生じた5症例 (男2例, 女3例, 平均52±7歳) について検討した.抗不整脈薬の内訳はピルジカイニド2例, フレカイニド, ジソピラミド, シベンゾリン各1例で, いずれも発作性心房細動および粗動に対して投与されていた.全例に基礎心疾患 (肥大型心筋症2例, 弁膜症術後2例, 拡張型心筋症1例) を認めた.投与量は通常量であったがPVT発生直後の薬剤血中濃度は中毒域を示した.PVT発生直前の調律は心房粗動または心房細動が4例, 他の1例は心房性期外収縮後にPVTが発生した.投与前, 投与後非発作時および発作時のRR間隔はそれぞれ864±93, 720±141, 404±131msecであった.同様にQRS幅はそれぞれ118±27, 162±38, 236±30msecで, 発生直前に上室性不整脈による頻脈とこれに伴うQRS幅の著明な延長を認めた.PVTの発生機序として, IaまたはIc群抗不整脈薬による頻度依存性Naチャンネル電流の過剰な抑制に伴う心室内伝導遅延の関与が示唆された.

著者関連情報
© 一般社団法人日本不整脈心電学会
前の記事 次の記事
feedback
Top