心電図
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急性虚血によるMS-551のIII群作用の消失
森谷 和徳宮崎 利久三好 俊一郎麻薙 美香古川 佳子三田村 秀雄小川 聡
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1997 年 17 巻 1 号 p. 55-61

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抄録

急性虚血時のIII群抗不整脈薬の作用様式には不明な点が多い.そこで本研究では, MS-551のIII群作用への局所心筋虚血の影響を麻酔開胸犬において検討した.洞結節領域を挫滅し, 心房ペーシングを行った.左冠動脈前下行枝遠位部の5分間完全閉塞操作を30分間隔で反復した.心周期 (CL) を400, 600, 800msecに変化させながら虚血中心部心外膜面から単相性活動電位を記録し, 90%再分極時間 (APD90) を計測した.3回目冠閉塞前にMS-551 (0.3mg/kg静注後, 0.05mg/kg/minを持続) を投与し, 2回目冠閉塞時の変化を対照としてその作用を評価した.対照冠閉塞時APD90はいずれのCLでも有意に短縮し, 再灌流により前値に復した.MS-551は冠閉塞前のAPD90を有意に延長した.延長率はCL800 (12±5%) >600 (11±7%) >400 (6±4%) であり, CL-APD関係曲線は急峻となった.しかし, 冠閉塞後1分以降その延長作用は消失し, 5分後には対照時と同程度までAPDは短縮し, 平坦なCL-APD関係曲線となった.
以上から, MS-551による心室再分極時間の延長作用 (逆頻度依存性) が急性虚血により減弱・消失することが示された.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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