1997 年 17 巻 1 号 p. 62-69
症例は70歳女性.主訴は動悸.平成2年より動悸を認め薬物治療中であったが服薬下にも発作頻回となり入院となった.頻拍時心電図は心拍数170/分のIongR-P型, narrow QRS頻拍を認めた.電気生理検査では頻拍時の心房興奮順序は心室ペーシング時の逆行性心房内伝導とは異なっていた.頻拍は心房プログラム刺激で誘発され, 心室期外刺激ではリセットされず, 高位右房, 冠静脈洞近傍の期外刺激でリセット可能であり, リエントリー性心房頻拍であることが示唆された.また頻拍は少量のATPおよび迷走神経刺激にて停止可能であった.低位右房前中隔の房室結節近傍にある最早期心房興奮部位における高周波通電により頻拍は停止し以後誘発不能となった.以上の所見より本頻拍は房室結節の一部あるいは結節近傍のtransitional zoneを含む心房内リエントリー性頻拍であり, 新しい心房頻拍の一治験例と考え報告する.