1999 年 19 巻 2 号 p. 125-130
虚血状態に陥った心筋細胞においては, 代謝阻害により生じる細胞内環境の変化により, 活動電位持続時間短縮をきたす.この活動電位持続時間短縮の機序として, 心筋ATP感受性K+ (K+ATP) チャネルの関与が示唆されている.インサイドアウトパッチモードで記録中, 細胞内側灌流液中のpHを酸1生側に変化させるとチャネルのATPに対する感受性が低下し, 平均電流の増力口がみられた.ATPによるチャネル抑制のK1/2はpH7.2では20μMでpH6.4では40μMであった.また, フリーラジカルを生成させるH2O2によってチャネルは不可逆的な活性化を受けた.さらに, 膜リン脂質であるホスファチジルイノシトールビスリン酸 (PIP2) はK+ATPチャネルを著明に活性化させた.これらの作用は心筋虚血時あるいは再灌流時のチャネル活性化の機序として従来提唱されていたATP/ADP説に加えて重要な役割を果たしていることが示唆される.