抄録
標準12誘導心電図の最大QT間隔と最小QT間隔の差と定義される“QT dispersion” (QT間隔のばらつき) が各種の心疾患の予後と関連するとされ注目されている, しかし一方QT dispersionの概念に疑問も提出されている.疫学的研究でもQT dispersionは予後と相関しないとの報告もなされ, 賛否両論がでている, QT dispersionは心筋細胞の細胞膜電流を担うイオンチャネルの不均一分布によると考えられる.よって心臓再分極時間の空間的“ばらつき”そのものに疑義はない, 問題はそれを体表面でとらえることができるか?である.理論的な考察でもCampbellらが当初提唱したQT dispersionは近年問題ありとされ, 新しい指標あるいは体表面心電図の処理方法が開発され報告されている.本稿ではQT dispersionに関する現状と問題点を整理する.今後の研究の一助になれば幸いである.