抄録
閉経後の女性において虚血性心疾患, 心臓突然死の発生率が増加することはよく知られている.この際自律神経活動にも変化をきたすと考えられているが, 詳細は明らかにされていない.今回我々は, このメ力ニズム理解の一助として, 閉経前女性の正常性周期における性ホルモンの分泌変化が自律神経活動, および心電図所見に及ぼす影響について検討した.正常性周期をもつ若年女性において, 卵胞期と黄体期に, QTc, QT dispersion (QTD) , 心拍変動解析を行い, 2期を比較した.
黄体期には心拍数, 収縮期血圧が上昇し, 高周波成分パワーが減少した.また, QTcが不変であったにも関わらず, QTDが延長した.以上より, 若年女性の性周期においても, 黄体期には迷走神経活動が衰退し, 心室内再分極過程のばらつきが増大することがわかった, この結果は, 閉経後の女性において虚血性心疾患, 心臓突然死の発生率が増加することの理解に有用と思われた.