心電図
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Na+チャネル遮断薬ピルジカイニドのイオンチャネル増加作用の分子機構: リドカインとの比較
飯塚 和彦加藤 克小倉 一能三明 淳一朗井川 修二宮 治明坂根 勲河田 康志山本 康孝星川 淑子佐々木 紀仁久留 一郎
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2005 年 25 巻 6 号 p. 502-516

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抄録

Na+チャネル遮断薬ピルジカイニド (Pil) がKv1.5チャネル蛋白を含む半減期の短い蛋白の増加作用を有することを見出したので, その機序をリドカイン (Lido) と比較して報告する.PilとLidoはプロテアソームで分解されるp53やIKK2蛋白を用量依存性に安定化し, このp53蛋白への作用は変異Mdmによりユビキチン・プロテアソーム系が遮断されると生じない, PilとLidoは用量依存性に20Sプロテアソーム活性を抑制するが, l-verapamilやE-4031にはこの作用は認められなかった.さらにPilはLidoに比較してより低濃度 (臨床使用濃度) でp53蛋白を安定化した.同様にPilとLidoはプロテアソームで分解されるKv1.5チャネル蛋白を安定化して細胞膜での/Kurを増加し, この作用は発現された培養COS7細胞Kv1.5チャネルのみならずラツト心房筋Kv1.5チャネルでも認められた, またKv1.5チャネル蛋白の安定化作用はPilがLidoより強い.その分子機序をin silicoドッキング試験から検討し, PilとLidoはともに20sプロテアソームを構成するβ5サブユニットの基質結合部位に作用して, その活性を抑制すると推測でき, PilがLidoに比較して結合性が高いことも再現できた, これらの結果からNa+チヤネル遮断薬Pilが臨床使用濃度でプロテアソーム活性を抑制し, Kv1.5チャネル蛋白を含む半減期の短い蛋白を増加させる作用を発揮することが明らかにされた.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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