抄録
7例の小児期のBrugada型心電図に対しNaチャネル遮断薬であるピルジカイニドを用いて負荷試験を行った.Brugada症候群の診断補助に用いられる高位右側胸部誘導心電図での心電図波形の変化, 加算平均心電図での心室遅延電位 (Lateventricular potential: LP) , 失神の既往, 45歳以下での家族内の突然死歴を症例ごとに比較してその有用性について検討した, ピルジカイニド負荷試験の陽性例は4例であった.高位右側胸部誘導心電図では, 陽性例4例はいずれも2誘導以上でJ波がより顕著となりBrugada型心電図が明確となった.加算平均心電図でLP陽性が確認できたのは1例のみであった.失神の既往, 45歳以下での家族内の突然死が確認できたものはいなかった.以上の結果より, 高位右側胸部誘導での2誘導以上のJ波の顕在化およびJ波確認可能な誘導の増加はピルジカイニド負荷試験陽性を予想させ, 統計学的にも有意な相関が確認された (p<0.05) .しかしピルジカイニド負荷試験を行ってもなおBrugada症候群と診断が確定した者はおらず, これまでの経過観察で心事故の発生も確認されていない.