抄録
症例59歳, 男性, 平成16年12月ごろより透析中に動悸を自覚するようになり, 上室頻拍 (SVT) , 心房粗動 (AF) と診断された.抗不整脈薬を処方されたが, 発作が増加したためアブレーションによる頻泊の根治目的で入院となった.AFは持続しており, 電気生理検査にて, 三尖弁周囲を反時計方向に旋回する通常型AFと診断された, 解剖学的峡部を線状アブレーションし, 洞調律に復帰した, さらにブロックライン完成後, 冠静脈洞ペーシング下で下壁誘導にて後半に陽1生成分を伴う二相性P波を認めた.その後心房早期刺激にて, 右房内三尖弁周囲を反時計方向に伝導する興奮順序を示すSVTが誘発された.頻拍中の心電図では下壁誘導のQRS波終末部に陽性P波 (実際には陰性・陽性の二相性P波) を認めた.頻拍が房室結節リエントリー性頻拍 (AVNRT) であることを確認したうえで, 遅伝導路の離断を行った.本例では峡部アブレーションにより, AVNRT時の右房内興奮伝播が右房自由壁を下行する様式に変化したことが偽性陽性P波の成因であると考えられた.