抄録
器質的心疾患を有さず, 心電図上第1度あるいはWenckebach型第2度房室ブロックのみられた若年者27例 (男23, 女4, 年齢10~20歳, 平均16歳) を対象とし検討を加えた。PR間隔あるいは房室ブロックの程度は検査日により変化を示すことが多かった。電気生理学的検査時, 1: 1房室伝導を示した21例では, PR, AH間隔は平均232, 156msecと延長し, 房室結節の有効不応期も平均560msecと延長を示した。運動やatropine負荷試験により, 負荷前1: 1房室伝導を示した例では負荷後心拍数は増加し, PR間隔は短縮を示した。またWenckebach型房室ブロックの症例では負荷後1: 1伝導に改善し, 伝導性の悪化した症例は認められなかった。以上より, 対象とした若年者の房室ブロックの発現には迷走神経の緊張: 充進状態が関与しており, 長期追跡調査でも予後は良好と考えられた。運動やatropine負荷試験等の非観血的方法に対する反応により, 房室ブロックの予後を判定しうることが示唆された。