抄録
症例は86歳女性, 心内膜下梗塞による急性左心不全で入院。経過中, 発作性上室性頻拍を認めprocainamide (PA) 800mg静注にて洞調律に復したため, 以後PAを持続点滴静注とした際, 12時間で2.4gと過剰投与された。投与中止時, 徐脈, QT延長 (0.60msec) が認められ, さらに典型的なTorsade de Pointes (TdP) が出現した。TdPの発作は十数回くり返したが, それぞれの発作は自然停止した。治療としてisoproterenol (ISP) 毎分0.8~1.0μg微量点滴静注を開始したところ, TdPは再発しなくなったが, 投与90分後にTdPでなく通常の発作性心室頻拍が頻発し持続したため, その都度電気的除細動をくり返し施行した。本例のTdPはPAにより誘発されたと考えられたが, 従来ISPがかかる例の大部分に有効とされたのに対し, 本例のごとき例もあるため, 高齢で虚血性心疾患を有する例に対しては, ISPは慎重に投与すべきであることが考慮された。