1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 57-67
Torsade de pointes (TdP) の発現に上位交感神経中枢の一つである視床下部が関与しているか否か実験的に検討した.STD: Wistar雄性ラットはouabainによるTdP発現に再現性があり実験系としてすぐれていた.抗NGF抗体を投与することによりimmunosympathectomyを行ったラットではTdPの発現が著明に抑制された.一方, 左迷走神経を切断し慢性飼育したラットではTdPの発現閾値は変化しなかった.視床下部上位での脳髄切断によりTdPの発現閾値の変化はみられなかったが, 視床下部下位での切断では心拍数の著しい亢進とともにTdP発現閾値の著明な低下が観察された.またpropranolol前処置によりこの閾値の低下は抑制された.視床下部に存在する上位交感神経中枢の興奮に伴い著しい交感神経系の緊張がもたらされてTdPの閾値が低下したと推測される.