1989 年 9 巻 2 号 p. 189-194
反復性心室性頻拍症 (VT) の発症機序を検討するためにVT中に心室ペーシングを行ないエントレインメント現象の観察を行なった.心筋梗塞に合併したVT9例 (I群) と左室起源の特発性VT4例 (II群) を対象とした.VTを誘発, 左室心内膜マッピングを行ない最早期興奮部位 (A) を検出後, VTより5~10拍/分速いレートでペーシングを行なった.I群では12の異なるVTが誘発され, そのうち11のVTでペーシング中に心電図上constant fusion beatsが, さらに8のVTではペーシングレートの増加にてprogressive fusionが観察された.II群では全例でconstant fusion, progressive fusionが観察された.エントレインメント中の伝導時間を解析すると, ペーシング部位よりA点までの伝導は著明に延長しており, その説明としてslow conduction部位を介する伝導が考えられた.I, II群ともにVTの機序はリエントリーで, その回路内にはslow conduction部位が存在することが強く示唆された.