日本環境感染学会誌
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報告
当院におけるバンコマイシン耐性腸球菌のアウトブレイクへの対応
浅沼 秀臣吉崎 清美岩井中 里香卸川 紘光佐藤 正幸
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2012 年 27 巻 3 号 p. 226-233

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抄録
  2009年4月からバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のアウトブレイクを経験した.当院は382床8病棟を持つ急性期病院であるが,小児科,産婦人科病棟を除く6病棟において合計30例にVRE保菌を確認した.
  東4病棟(脳神経外科)入院中の66歳女性が発端.交差が考えられた4例からVREが検出されたため,同病棟全入院患者に検査を拡大したところ新たに2例の保菌者が発見された.同時期に西4,東5病棟において8例が保菌者と判明したため検査を全病棟に拡大.その後,西5,東6,西6病棟からも順次保菌者が判明した.保菌者が確認された病棟では全患者の保菌状態が確定するまで,入退院,転棟を制限した.確定後は保菌者をコホート隔離とし,新規入院患者の監視培養,非保菌者の定期的監視培養を実施した.各病棟において環境消毒と接触感染予防の指導を徹底した.しかし新たな保菌者が出現したため病棟毎の管理は限界と判断,東4病棟にすべての保菌者を集め集中的に隔離管理した.また,医療スタッフに対する指導のみならず,清掃スタッフへの指導を強化したところ保菌者は激減した.アウトブレイクが終息するまでは14ヶ月を要した.保菌者30例から分離されたVREはすべてvanB型で,パルスフィールド電気泳動法により,すべて同一菌株由来である可能性が指摘された.
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© 2012 一般社団法人 日本環境感染学会
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