日本環境感染学会誌
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原著論文
ATP拭き取り調査による院内環境表面のモニタリング
柴田 洋文川添 和義柴田 高洋伏谷 秀治渡邉 美穂高開 登茂子長尾 多美子東 満美水口 和生
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2014 年 29 巻 6 号 p. 417-423

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抄録
  病院環境表面のモニタリングについて,アデノシン三リン酸(ATP)生物発光および微生物学検定を組み合わせて使用することにより評価した.目的は,患者に対して危険をもたらしうる微生物汚染の迅速な検知方法を開発することである.この目的のために,私たちは,外来患者病棟におけるトイレ設備表面のATP生物発光分析および微生物学的検査を行なった.5か所のスクリーニング部位はすべて,清潔で消毒されたステンレス鋼表面よりも著しく高いATPレベルを示し,高度接触表面であること,そして有意に高い濃度の有機物を保持していることがわかった.微生物学的検定により,微生物汚染がスクリーニング部位の至る所に広がっていることを確認した.微生物が検出されるサンプルのATP値は,微生物が検出されないサンプルのATP値より有意に高い範囲にシフトしていた(p<0.01).しかしながら,スクリーニング部位のATP値と好気性コロニー数との間の直線的関係は確立されなかった.これらの結果は,環境の微生物汚染の測定においてATP生物発光を使用して得られるデータは,定量的ではなく定性的なものであることを明白に示唆している.結論として,ATPモニタリングは,微生物による環境汚染およびそれが持続的な汚染状態にある可能性を把握し,院内環境に対する現在の清掃方法に警鐘を鳴らすうえで,迅速かつ簡便な優れた方法である.
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© 2014 一般社団法人 日本環境感染学会
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