2015 年 30 巻 4 号 p. 274-280
手洗いや手指衛生は院内感染防止対策の基本である.しかし,医療関係者の多くは手指衛生を遵守しているとは言い難く,手指衛生遵守率の向上は院内感染対策の永遠のテーマでもある.本研究では,感染委員会及びICTが中心となり,組織的に手指衛生遵守率向上に取り組んだ結果,取り組み当初(2011年)3.2%であった手指衛生遵守率は,2年後(2013年)には21.9%と飛躍的に上昇した.さらに,MRSAの検出率は31.5%から13.1%に減少し,MRSAの新規分離率も11.5%から2.6%まで減少した.手指衛生に対する組織的な取り組みは,その遵守率を向上させ,MRSA分離率への低下につながり,さらにはMRSAの新規検出菌数の減少へとつながったと考えられる.本研究の結果から,組織的に手指衛生遵守率向上の取り組みを行う事は,院内感染防止に有用であると考えられる.