抄録
当院において2014年2月から3月の1ヶ月間に,同一病棟において3名の患者からmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)が検出された.3名は入院後48時間以降の検出例であった.さらに,検出同時期に長期入院MRSA保菌患者1名が同じ病棟に入院していた.これら4名から検出されたMRSA株は,薬剤感受性パターン(アンチバイオグラム)とphage open reading frame typing法による遺伝子学的解析が一致した.我々は院内伝播を疑い,感染経路を明らかにするために同病棟における環境のMRSA培養と遺伝子学的解析を実施した.その結果,環境から4株のMRSAが検出され,患者由来株のアンチバイオグラムと遺伝子学的解析が同一であった.これらのことから,病棟の環境におけるMRSAの拡散が示唆された.その後,感染制御チームが環境整備の徹底を含めた対策を講じ,院内伝播は終息した.
これらの結果より,環境のMRSA培養とPOT法を用いた遺伝子学的解析に基づいて環境整備を徹底したことで,院内伝播を最小限に抑えられたと考えられた.