日本環境感染学会誌
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MRSAの院内伝播制御における環境調査と遺伝子学的解析の有用性
野口 恵子満田 正樹山﨑 勝利太田 岳志太田 かおり山本 基辰田 仁美
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2015 年 30 巻 4 号 p. 257-261

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抄録
  当院において2014年2月から3月の1ヶ月間に,同一病棟において3名の患者からmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)が検出された.3名は入院後48時間以降の検出例であった.さらに,検出同時期に長期入院MRSA保菌患者1名が同じ病棟に入院していた.これら4名から検出されたMRSA株は,薬剤感受性パターン(アンチバイオグラム)とphage open reading frame typing法による遺伝子学的解析が一致した.我々は院内伝播を疑い,感染経路を明らかにするために同病棟における環境のMRSA培養と遺伝子学的解析を実施した.その結果,環境から4株のMRSAが検出され,患者由来株のアンチバイオグラムと遺伝子学的解析が同一であった.これらのことから,病棟の環境におけるMRSAの拡散が示唆された.その後,感染制御チームが環境整備の徹底を含めた対策を講じ,院内伝播は終息した.
  これらの結果より,環境のMRSA培養とPOT法を用いた遺伝子学的解析に基づいて環境整備を徹底したことで,院内伝播を最小限に抑えられたと考えられた.
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© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
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