2017 年 32 巻 2 号 p. 74-84
双方向的な情報交換であるリスクコミュニケーション(risk communication,RC)は,新型インフルエンザパンデミックに対する有効な危機管理策の一つである.本研究は,パンデミック2009H1N1において,感染管理看護師(infection control nurse,ICN)が行ったRCの実態,および平時のどのようなICN活動が発生時のRC促進要因であったかを明らかにすることを目的とした.
感染症指定医療機関において2009年度に感染管理を主担当したICNを対象に自記式質問紙調査を実施した.パンデミック発生時のRC促進に関連する平時のICN活動について多変量解析を行った.
パンデミック発生時のRCの実施率は13~82%であり,充分ではなかった.院内職員からの「不安や精神的ストレス」等に関する情報の聞き取りが少ない傾向にあった.RCを促進する平時のICN活動は,専従,24時間対応の緊急連絡用電話の携帯,国や地方自治体・近隣の保育所・委託業者責任者との窓口担当,全職員を対象としたコンサルテーション活動であった.新型インフルエンザへ備えるためには,これらの平時のICN活動とともに,ICNへのRCに関する教育の強化,ICNの複数配置が求められる.