日本環境感染学会誌
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報告
病院薬剤師を対象とした個人防護具に関する多施設間実態調査
村田 龍宣大橋 正和本多 あずさ水野 幸子村上 あおい林 彰彦杤谷 健太郎清水 恒広
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2017 年 32 巻 2 号 p. 94-100

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抄録

標準予防策と感染経路別予防策は感染制御の基本であり,薬剤師は他の医療スタッフと同様に手指衛生を遵守し,個人防護具(PPE)を適正に使用する必要がある.今回,薬剤師のPPEに関する知識レベルや実践能力の実態を把握するため,感染防止対策加算で連携する病院薬剤師を対象にアンケート調査を行い,その後PPE着脱実習を含む研修会を実施した.アンケートは9施設57名から回答を得た.アンケートでは,PPEの付け方の順序,PPEの脱ぎ方の順序,廃棄分別方法を,それぞれ78.9%,77.2%,56.1%が「知らない」と回答した.また,感染経路別予防策が必要な患者であることを示す自施設での表示を53.8%が「知らない」と回答した.さらに,感染経路別予防策が必要な患者への服薬指導時に約50%がPPEを着用していなかった.以上から,病院薬剤師のPPEに関する知識・技能は十分でないことが示唆された.研修会後の調査では,PPEの付け方の順序,PPEの脱ぎ方の順序,廃棄分別方法について,それぞれ84.3%,86.3%,90.2%が正解した.また,その理解度は講義のみの研修会よりもPPEの着脱実習を取り入れた研修会の方が有意に高かった.今後,病棟業務を行う薬剤師は,感染経路別予防策の必要性を十分認識したうえで,事前にPPEの着脱実習を行い,着脱の手技と使用済みPPEの廃棄に習熟する必要があると考える.

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© 2017 一般社団法人 日本環境感染学会
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