日本環境感染学会誌
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報告
COVID-19陽性である同居家族から医療従事者への感染リスク要因の検討
辻 奈津美西出 由紀子賀村 慎太郎田仲 弘行
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2024 年 39 巻 4 号 p. 133-139

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抄録

COVID-19は院内クラスターを引き起こす最も主要な原因ウイルスである.医療従事者によりウイルスを院内へ持ち込むことは,防ぐ必要がある.A病院では職員自身が家庭内での感染を防止することに注目した.COVID-19に感染した同居家族をもつ職員を対象に個別指導を実施した.これまでに陽性者の内訳としての家庭内感染率や二次感染率の報告はあるが1)感染しなかった要因の報告はない.今回の研究の目的は,同居家族から医療従事者へ家庭内感染する場合の因子を検討することである.感染可能期間に感染した職員群(13名)と感染しなかった職員群(38名)につき症例対照研究を行った.統計ソフトEZR統計分析を用いた単変量解析の結果,感染した職員群の年齢は感染しなかった職員群に比べて有意に低かった(中央値39.7歳,48.5歳).家庭内感染リスク要因として,先行感染者に6歳未満,特に3歳未満がいるとリスクが高まること(オッズ比16.9,P値0.002)がわかった.先行感染者が18歳以上であれば感染リスクが有意に少なかった(オッズ比0.19,P値0.005).ロジスティック回帰分析によると,先行感染者が複数人以上では感染リスクがより高くなった(オッズ比63.2,P値0.0017).また家庭内感染対策個別指導の実施は感染リスクを減じる効果があった(オッズ比50.9,P値0.04).

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© 2024 一般社団法人 日本環境感染学会
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