環境感染
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Clostridium difficile関連腸炎に対し経口バンコマイシンの投与中に便よりVREが検出された症例の経過とその後の院内感染対策
高田 徹石川 崇彦村谷 哲郎西田 武司武田 卓山口 覚原賀 勇壮志村 英生橋本 丈代坂本 眞美恵良 文義吉村 尚江野中 敏治田村 和夫松本 哲朗下野 信行渡辺 憲太朗
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2006 年 21 巻 1 号 p. 6-11

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抄録

2004年1月福岡大学病院においてClostridium difficile関連腸炎に対し経口バンコマイシン投与中の患者便よりvanAタイプVREが検出され, また同時期に同一部署に入院中の他患者尿からも同一遺伝子型のVREが分離された. 感染対策室の対応としては, 最初にVREが検出された時点で直ちに現場への介入を行い, 患者の個室への隔離を含む標準予防策および接触予防策の徹底, バンコマイシン投与中止, 患者周囲環境の消毒薬による清拭, を指導し第2例目検出時にはさらに, 感染経路の検索, 病棟スタッフを対象としたVRE感染対策に関するミニレクチャー, 救命救急センター入院全患者に対する便のVREスクリーニング検査, 各種連絡網を通じた病院全部署へのVRE分離例の標準予防策の徹底並びに抗MRSA治療薬適正使用の通知, を行った. 最初の症例は腸炎の改善と共に便中VREは陰性化し, 2例目からのVRE検出は1度のみでVREによる感染徴候は認められなかった. 両者間の伝播経路は不明であったが, 2例以外に同一部署内患者からのVRE分離は認められなかった.今回の事例をきっかけに, Clostridium diffcileトキシン陽性例, 経口VCM処方例における感染対策室の介入を開始した. 当院では, 平成11年より培養検査に供された入院患者の便は全例バンコマイシン含有VREスクリーニング培地へ塗布し, VREのスクリーニングを実施している. 今回早期にVRE保菌者を発見でき, 感染拡大を未然に防ぐことが出来たのは, このスクリーニング検査実施の成果であり, 便VREモニタリング検査はVREの院内拡散防止に有用と考えられた.

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© 日本環境感染学会
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