環境感染
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山梨県A病院におけるVanB型バンコマイシン耐性腸球菌集団分離事例
森山 和郎登坂 直規三村 敬司都倉 昭彦砂川 富正中島 一敏谷口 清州岡部 信彦
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2006 年 21 巻 3 号 p. 168-174

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抄録

2004年2月から8月に, A病院入院患者において24名からVanB型バンコマイシン耐性Enterococcusfaecium (以下VRE) が便培養検査にて分離された. VREによる感染症と診断された者はいなかった. 全症例の分離株の分子疫学的解析の結果から, 全例同一の起源に由来するVRE株による院内感染事例と考えられた. VREの伝播経路, 保菌の危険因子同定のため, 施設の観察・聞き取り調査や症例対照研究を実施した. 多くの症例間は直接接触が無く, 医療従事者のみが日常的に接していた. VRE集団分離前の, 標準予防策, 接触感染予防策は一部に不徹底が認められ, おむつ交換などの患者処置時に医療従事者の手指・着衣を介した伝播が発生していたと考えられた. また, 床面を直接這う等の行為により, 汚染された病室環境を介して伝播が発生した可能性が強く疑われる症例も認められた. 症例対照研究結果から, 特定の病棟を中心に伝播が起こったと考えられた. また95%の症例で認められた「VRE検出前・1ヵ月間の抗菌薬使用歴」は多変量解析で境界域の関連 (オッズ比7.5, p=0.081) となったが, 単変量解析では有意に強い関連が認められ (オッズ比8.9, p=0.013), 保菌の危険因子の可能性が示唆された. VRE拡大防止上, 標準予防策, 接触感染予防策の強化が必要と考えられた. また床面を手などで直接触れる患者がいる状況では, 床面の便汚染予防や清掃消毒も必要と考えられた. また抗菌薬投与患者における注意深いVRE感染予防と監視の重要性が示唆された.

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