抄録
障害学生支援は、改正障害者差別解消法で示されている「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」を念頭においた支援であり、対応要領や対応指針には、大学における支援の考え方と方法が明記されている。これらは、大学進学を希望する障害のある生徒が、高等学校から大学への移行時期に混乱することがないよう情報公開する必要がある。大学における合理的配慮の提供においては一定の手順が示されており、障害学生からの申し出が必要となっている。大学は状況把握と根拠資料等を複合的に勘案して配慮内容を検討していくが、そのプロセスでは、障害学生の意思を尊重し、教員も交えて合理的配慮に関して建設的対話を進めていく必要がある。大学における支援は、神経発達障害学生の社会的コミュニケーションの障害や実行機能の障害を念頭に置いた支援スタイルが重要であり、学生が直面する障害特性による困りごとを解消し、他の学生と同等の学びができるよう修学を支える支援が中核となる。継続的な支援が行われた神経発達障害の学生は、修学支援や就職活動支援を通して、自身の障害特性を客観的に眺めることができ、障害受容や自己理解が本人の納得するプロセスで進められていった。高等教育機関における神経発達障害のある学生への支援は、学びの場の保障にとどまらず、職業人としての必要となる障害特性への対処法を知り、必要な支援を求めていく態度を育成するものである。