予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
7 巻, 1 号
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  • 辻野 尚久
    2022 年 7 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
  • 田近 亜蘭 , 熊谷 成将, 古川 壽亮
    2022 年 7 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】 活動記録表を半自動的に作成できるスマートフォンアプリケーション「くらしアプリ」を開発し、それとウェアラブルデバイスを用いて、寛解期のうつ病患者において、再発の2〜4週間前に起こる活動の変化から再発を予測できるかを調査した。 【方法】 4つの大学病院とその関連医療機関の合計14施設に通院中の寛解期のうつ病患者100名を1年間追跡し、追跡を完了した89名を解析対象者とした。精神症状はK6とPHQ-9を用いて評価し、それらの得点から再発を定義した。解析は2つのモデル (1)Panel vector autoregressive modelと(2)Marginalized zero-inflated negative binominal modelを用いた。 【結果】 くらしアプリからは平均約92%、シルミーからは平均60〜70%の活動記録データを取得できた。(1)のモデルでは再発の3週間前に長時間睡眠が増えていた。さらに、再発しているのに再発と判断されなかった“偽陰性”を考慮した(2)のモデルでは、2〜4週間前にゴロゴロ、ボーッと過ごす時間が増えることが、再発の予測因子であった。 【考察】 こういったデバイスを用いた研究で得られるデータ量は膨大であり、従来の医学研究で得られる量をはるかに超えている。経済学や工学など様々な分野の専門家との共同研究を行い、データに合った様々な解析方法を検討していく必要がある。また、データを集める際、欠測を減らしてデータの質を担保するために、機材トラブルへの速やかな対処や、参加者に対する励ましの声かけをするなど、最大限に工夫することが重要である。
  • 根本 清貴
    2022 年 7 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    背景:新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックによって外来診療を維持することが困難な中、電話再診システムを構築した。方法:電話再診を円滑に行うことができるためのWebサイトを構築し、申し込み内容を各診療科別に出力するようにした。また、各外来担当医師がハンズフリーで患者と電話で話しながらカルテを記載できるようにもした。結果:2020年3月から2021年10月までに電話再診の申し込み累計は病院全体で40088件であった。そのうち精神科は7857件であり、全体の19.6%を占めた。考察:精神科医療における遠隔診療の有用性はこれまでにも報告されてきているが、実際に電話再診を実際に行うことで精神科医療と遠隔診療の親和性を確認することができた。また、システム構築において、平時からの多職種連携の重要性を再確認することとなった。
  • 関﨑 亮
    2022 年 7 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延という未曾有の危機により、三密の回避、マスクの常用など、いわゆる「新しい生活様式」が若者に広く求められた。また、繰り返される緊急事態宣言により、これまで当然にあった学校生活を過ごせなくなった。このような変化が子ども・若者のメンタルヘルスに与える影響は少なくなく、事実、2020年に自殺した児童生徒は統計のある1980年以降最多の479名であった。他方、2022年度から施行された新学習指導要領に「精神疾患の予防と回復」が加わり、学校を拠点にしたメンタルヘルスの向上への取り組みが始まった。正しい精神疾患の知識を獲得したうえで、次に重要になるのは、子ども・若者が心身の不調時に正しく速やかに援助希求行動が取れる環境整備になる。 このような社会課題は本邦に限られたことではなく、諸外国では学校を拠点にしたメンタルヘルスケアモデルが社会実装し一定の効果を示している。 ここでは、本邦の教育・医療の環境変化や学校保健の特徴を考慮したうえで、諸外国での事例を参考に、筆者らが取り組む学校を拠点に遠隔医療を活用したメンタルヘルスケアサービスを紹介し、子ども・若者を取り巻く環境を諸家の知見を交えながら概観し、子ども・若者がより健やかに成長できる社会について考えていきたい。
  • 清水 徹男
    2022 年 7 巻 1 号 p. 26-41
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    目的:過疎と豪雪地帯の山国秋田県で精神保健福祉センター(以下センター)が全県をカバーする遠隔精神保健を行うためにICT network:Akita Mental-health ICT Network (AMIN)を導入し、AMIN構築・運用の阻害要因とその対策、並びにその効果を検証する。 対象と方法:対象は県の運営する8箇所の保健所の精神保健担当保健師(以下保健師)である。保健所保健師からはセンターの地域精神保健に関する機能が見えない、従って、センターと連携するニーズがないという声があった。そこでセンターに対するニーズを呼び起こすために、センターは保健師が支援に利用できるツールを開発し、その使用法に関するワークショップを県内数カ所で行った。さらに、センターが多職種チームを保健所にアウトリーチして地域のアルコール依存及びひきこもりの困難事例について事例検討会を開催し、保健師のエンパワメントを図ることとした。その一部にはAMINを用いた。AMINは、タブレット端末とポケットWiFiをセットとしたもので、安全性の担保された会議システムが実装されている。12セットのうち3セットをセンターに、8セットを各保健所に、1セットを県内依存症自助組織の取りまとめを担うPSWに配布した。 結果:センターの多職種チーム派遣による保健師エンパワメント事業開始後、保健所からの事例検討会へのセンター多職種チーム参加要請は増加した。その一部にはAMINを利用して行うことで、アウトリーチによる移動時間を節約でき、開催件数を増やすことが可能となった。また、AMINを用いてもリアルの事例検討会に匹敵する内容の議論を行うことができた。保健所の依存症相談実績はエンパワメント事業開始1年後には延べ人数が増加、2年後には実人数と延べ人数が明らかに増加した。ひきこりの相談実績はエンパワメント事業開始わずか半年後でも延べ人数が増加した。 結論:多職種チームによるセンターの保健師のエンパワメント事業は保健所のニーズを掘り起こすことに有効であった。そこに遠隔精神保健のツールであるAMINを導入することでエンパワメント事業が一層に促進され、センターと保健師の連携がさらに進むことが示唆された。その成果として保健所における依存症並びに引きこもりの相談・支援の向上に役立つことが示された。
  • 今村 明, 山本 直毅, 三宅 通, 馬場 杏菜, 疋田 琳, 田山 達之, 大橋 愛子, 熊﨑 博一, 小澤 寛樹, 森本 芳郎
    2022 年 7 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    長崎県では、2003年、2004年、2014年に起こった重大な少年事件についての検討から、2015年10月、長崎大学病院地域連携児童思春期精神医学診療部が設立された。事件の振り返りから、このような事件の発生を防ぐためには、医療機関と教育機関との連携が必須であると考えられた。 当診療部では、学校との連携について以下のようなことを行っている。まず神経発達症による問題と児童虐待などによって生じる愛着・トラウマの問題に対し、包括的なアセスメントを行い、結果を本人・家族だけではなく、学校とも共有する。次に教員に対して、発達のかたよりがある子どもには、その子の発達特性に合った指導を行うこと、愛着・トラウマの問題がある子どもには、トラウマインフォームドケアを念頭に置いた対応を行うことを説明し、子どもに対して適切な指導が行われるように導く。また家庭と学校との対立の構造に介入していく。  本稿ではこのような学校への介入を中心に、当診療部の取り組みを紹介する。
  • 岩永 竜一郎
    2022 年 7 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    神経発達症児等の支援として、学校等への訪問支援、コンサルテーションが行われている。本稿では、著者が行ってきた特別支援教育における巡回相談、長崎大学子どもの心の医療・教育センターの取り組みの内容を紹介し、今後の課題について述べる。 著者が行った巡回相談では、学校から、授業中の観察と支援方法提案、保護者の相談、保護者へのアドバイス、個別検査、保護者及び教師への講話、等の依頼があり、対応した。これらを通して、巡回相談では、子どもの普段の行動を見て特性をとらえることができたり、医療機関につながりにくい子どもへの支援ができたり、教師と話をすることで子どもの普段の様子を把握できたり、学校内の環境要因の改善につなげられたりする等の利点があると考えられた。 我々の調査では、保育園等に多くの神経発達症の可能性がある子どもがいることが示され、普段子どもを取り巻く人の理解と支援を促すことは重要であることが示唆された。そのため、長崎大学子どもの心の医療・教育センターでは、訪問支援やeラーニングによる保育士、教師、療育関係者等への講義の配信を行っている。 ここで紹介する巡回相談等のアウトリーチ支援や子どもを取り巻く人への専門的知識の提供は神経発達症児の支援において、重要と考えられる。今後、このような取り組みに精神医学の専門家が参与することが望ましいと考える。
  • 西村 優紀美
    2022 年 7 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    障害学生支援は、改正障害者差別解消法で示されている「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」を念頭においた支援であり、対応要領や対応指針には、大学における支援の考え方と方法が明記されている。これらは、大学進学を希望する障害のある生徒が、高等学校から大学への移行時期に混乱することがないよう情報公開する必要がある。大学における合理的配慮の提供においては一定の手順が示されており、障害学生からの申し出が必要となっている。大学は状況把握と根拠資料等を複合的に勘案して配慮内容を検討していくが、そのプロセスでは、障害学生の意思を尊重し、教員も交えて合理的配慮に関して建設的対話を進めていく必要がある。大学における支援は、神経発達障害学生の社会的コミュニケーションの障害や実行機能の障害を念頭に置いた支援スタイルが重要であり、学生が直面する障害特性による困りごとを解消し、他の学生と同等の学びができるよう修学を支える支援が中核となる。継続的な支援が行われた神経発達障害の学生は、修学支援や就職活動支援を通して、自身の障害特性を客観的に眺めることができ、障害受容や自己理解が本人の納得するプロセスで進められていった。高等教育機関における神経発達障害のある学生への支援は、学びの場の保障にとどまらず、職業人としての必要となる障害特性への対処法を知り、必要な支援を求めていく態度を育成するものである。
  • 森 良一
    2022 年 7 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    精神疾患に関する教育内容は、公益財団法人日本学校保健会の委員会や中央教育審議会での議論を踏まえて、最終的に文部科学省が高等学校学習指導要領に位置づけた。 学習指導要領の教科に位置づくことで、教科書ができ、日本のすべての高等学校において精神疾患に関する内容が指導される。また、国や都道府県の教員研修において、精神疾患に関する内容が取り上げられ、学校での理解が深まる。さらに、大学の保健体育に関する教職課程の授業で精神疾患に関する内容が指導され、教職を目指す大学生の理解も促進される。  このように教育内容として位置づくことで、対象者とそれにかかわる人々の精神疾患に関する理解を深め、様々な効果が期待できる。一方で、実施する上での課題や検討事項もある。課題としては、医学用語と教育用語の差異の検討や、精神疾患に罹患している生徒の授業への参加の仕方など様々なことがあげられる。これらの課題解決の方向性や高等学校の教育の検証を行う必要性、さらには、義務教育段階での教育への位置づけについて考えていきたい。
  • 西山 志満子, 桂 雅宏, 盛本 翼, 古田 大地, 濱家 由美子, 高橋 努, 根本 隆洋
    2022 年 7 巻 1 号 p. 77-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    近年、精神病性障害の発症ハイリスクを想定したアットリスク精神状態(At-Risk Mental State:ARMS)の概念が提唱され、それを用いた研究や臨床サービスが展開されてきた。ARMSの性質や経過、治療法に関する知見が蓄積され、それに立脚した診療ガイドラインが本邦を含む各国で策定されている。 しかし、研究の場を離れて日常的な臨床現場でARMSを扱うためには、依然として数々の障壁が存在する。例えば、専門的な診断基準の活用、つまり弱い精神病症状の強度・頻度の評価や、それに則ったARMSの判定には習熟を要し、一般的な臨床家がこれを行うことは難しい。また、非精神病性の症状と精神病症状との関係性の解釈、併存診断のあり方に迷う事例は少なくない。治療においては、顕在発症した精神病性障害に対するものとは異なるARMS独自の診療指針の理解が難しい。さらには、地域や施設によって、ARMSの診療のあり方に相違が生じている可能性も否めない。 そこで、第24回日本精神保健・予防学会学術集会では、「ARMS症例から学ぶ ~早期介入の灯光を目指して~」と題して、症例検討シンポジウムが催された。それらの課題について、具体的症例を通じて議論を行うことで、日々の疑問を解消し、診療のあり方の均てん化を促進することが目的であった。当日は2名の演者から症例提示と問題提起を受け、3名の専門家をコメンテーターに迎えて討論が行われた。本稿では、症例と討論の概要を報告する。
  • 橋本 玲子, 柏谷 真由美, 寺井 利夫, 新田 佑輔, 小池 進介, 中井 寿雄, 川﨑 康弘
    2022 年 7 巻 1 号 p. 96-106
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
    目的:40歳代前半の成人のメンタルヘルスに問題を抱えた場合の援助希求に関連する要因を明らかにすることを目的とした。 対象と方法:40−44歳までの町民を対象として、精神疾患についての経験や行動意図や援助希求行動に関する調査票を用いて自己記入式調査を実施した。 結果:援助希求に関連する要因は、「自分自身がメンタルヘルスの問題を抱えた経験がなし又はわからない」(OR 3.97 95% CI: 2.11-7.48)、「専門家を受診して治療を受けた経験がある」(OR 4.62 95% CI: 2.16-9.89)、「メンタルヘルスに関する講義や講演への興味がある」(OR 1.74 95 % CI: 1.11-2.73)、「障害者差別解消法の知識がある」(OR 2.53 95% CI: 1.27-5.05)だった。 結論:治療経験がある者は、メンタルヘルスの問題が生じた場合に専門家に援助希求を示す可能性がある。一方で、精神科などへの馴染みのなさや知識不足、スティグマが影響し、容易に援助希求を示しにくい可能性がある。住民のメンタルヘルスリテラシーを高めることは、メンタルヘルスの問題が発生した際に、専門家への援助希求を高める可能性がある。
  • 高橋 努
    2022 年 7 巻 1 号 p. 107-109
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
  • 桂 雅宏
    2022 年 7 巻 1 号 p. 110
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー
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