抄録
【目的】 腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)において後壁補強(posterior reconstruction: PR)に加えてanterior suspension(AS)を追加する手技の有用性について検討した.
【対象と方法】 2009年4月から2012年3月の期間に,当施設において施行した100例のLRPにおいて,前半50例はPRのみを(AS非施行群),後半50例はPRに加えて尿道前方stabilizationを回復させる目的でASを追加施行した(AS施行群).術後早期尿禁制率やapical %positive surgical margin(PSM)をAS施行群と非施行群とで比較した.尿禁制の定義は0パッド0リークとした.
【結果】 術後 1,3,6ヶ月における尿禁制率は AS施行群でそれぞれ 12,34,64%,非施行群で18,42,62%,で両群間に有意差を認めなかった.Apical %PSMはAS施行群で有意に低値であった(4% vs.18%,P=0.026).両群における合併症発生率に有意差は認めなかった.
【結語】 今回LRPにおいてPRに加えてASを追加施行することで有意な術後早期尿禁制は認められなかったが,apical PSMは有意に減少した.ASに基づく周術期有害事象の増加は認めなかった.