抄録
腎盂尿管移行部閉塞(UPJO)に対する腹腔鏡下腎盂形成術は,1993年Schuesslarらにより初めて報告された1).本術式は交差血管の処理や腎盂の形成法などが開放手術と同様のコンセプトで行えるため,鏡視下手術の低侵襲性を維持しつつ開放手術に匹敵する良好な治療成績が期待でき,腎盂尿管移行部閉塞(UPJO)に対する新たな低侵襲外科的治療法として本邦でも普及しつつある2).
腹腔鏡下腎盂形成術の到達法には経腹膜アプローチと後腹膜アプローチがある.われわれは1998年より本術式による治療を開始,2013年3月までに162尿管に対して施行,うち161例(99.2%)は経腹膜アプローチで行った3).いずれの到達法を用いても治療成績や合併症発生率には差がないとの報告が多く,到達法の選択は術者の技量や嗜好により決定してよいと考えられる.しかし経腹膜アプローチで得られる広いワーキングスペースは,特に体腔内縫合に不慣れな初心者にとっては大きなアドバンテージとなり得る.Davenportらは,初期17例を後腹膜アプローチで開始したものの治療成績が悪く,その後,経腹膜アプローチに変更し施行した66例の成功率は92%に向上したと述べている4).特に後腹膜腔がより狭い小児例や,術後再狭窄などの二次狭窄例では経腹膜アプローチを第一選択とすべきと考える5).また,後天性の閉塞原因の50%前後を占めるとされる交差血管の確認や処理も経腹膜アプローチの方が容易とする報告もある6).
本稿ではわれわれが基本術式としている経腹膜アプローチによる腹腔鏡下Anderson-Hynes法の手術手技を紹介し,各ステップにおける留意点について解説する.