1998 年 1 巻 2 号 p. 185-189
救急救命士制度導入と心肺蘇生法普及運動後の救急医療現場の変化を検討した。心疾患によるCPA(心臓性CPA)例のうち,救急救命士の特定行為開始前(’92.4~’95.3)の118例(A群)と特定行為開始後(’95.4~’98.3)の124例(B群)を対象とし,蘇生率,生存退院率,社会復帰率の比較を行った。さらに,心肺蘇生法講習会受講者数と内因性CPA例でのbystander CPR施行率,および心臓性CPA例の生存退院率との関係について検討した。B群での特定行為施行率は19.4%と低率であり,蘇生率はA群22.9%,B群24.2%,生存退院率はA群12.7%,B群12.9%,社会復帰率はA群3.4%,B群4.8%といずれも有意差はなかった。受講者数は1997年度に累計145,687人に達した。bystander CPR施行率は,1993年度13.2%,1997年度35.2%と有意に増加した(p<0.01)。しかし,生存退院率は1993年度5.1%,1997年度14.6%と有意な改善はみられなかった。未だに生命予後の改善はなく,救急救命医療システムのさらなる充実が必要である。