1998 年 1 巻 2 号 p. 212-215
心疾患でありながら主症状が意識障害である場合の救急現場での病態評価は非常に困難である。今回このような症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は69歳女性で嘔吐後卒倒し,119番通報された。救急隊到着時の臨床症状は,意識障害・片麻痺・偏視等の中枢神経症状で,主訴も頭痛であった。しかし,心電図上Ⅲ度房室ブロックを認め心拍数も30台であった。さらに傷病者の家族が脳外科二次救急病院へ連絡済みであった。このような状況から現場判断に苦慮したが,心疾患が否定しきれないことから収容先を三次救急病院へ変更した。収容後検査にて右冠動脈閉塞による心筋梗塞と診断され,PTCAを施行し再疎通に成功した。なお頭部CT上異常は認めなかった。本症例は現場での的確な判断が奏功した事例で,今後の現場判断の参考となれば幸いである。