日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
IABO併用下に開腹術とIVRを施行し救命しえた腹部外傷の1例
大楽 耕司宮内 崇大塚 洋平忽那 賢志戸谷 昌樹小田 泰崇井上 健鶴田 良介笠岡 俊志前川 剛志
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2009 年 12 巻 1 号 p. 50-56

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抄録

大動脈閉塞バルーン(intra-aortic balloon occluder,以下IABO)を用いて出血制御した腹部外傷の1例を経験した。症例は65歳,男性。乗用車事故により受傷した。ISS 24,RTS 6.904,腹腔内に大量の血液貯留を認め,造影CT検査で腸間膜と右側腹壁背側皮下に血管外漏出像を認めた。その後収縮期血圧が60mmHg台に低下し,IABOを挿入し開腹術を施行した。術中所見では回腸損傷,腸間膜損傷,回腸静脈損傷を認めた。IABOで血圧を維持しながら,損傷した回腸静脈を結繁止血し,損傷した回腸を部分切除して人工肛門を造設した。後腹膜や腹直筋間からの出血に対してはinterventional radiology(以下IVR)による上血を行った。IVR後にバルーンの拡張を解除したが,血圧低下は認めなかった。開腹術が必要な外傷症例では,IABOの併用が有益であると考えられた。

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© 2009 日本臨床救急医学会
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