日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
出血源検索に難渋した高齢者外傷症例
―Retzius窩血腫にてショックをきたした1症例―
本村 友一瀧 健治寺坂 勇亮西中 徳治
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2009 年 12 巻 5 号 p. 506-510

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抄録

比較的軽微の受傷機転によりショックとなり,出血源検索に難渋した高齢者外傷症例を報告する。79歳女性。自転車走行中に転倒し左大腿を打撲しERへ搬入された。Primary Survey異常なし。Secondary Survey終了後,検査を待つ間にショックとなり初期輸液療法を開始した。出血源検索で体表面,FAST,胸部および骨盤X線検査に異常を認めなかった。初期輸液療法への反応乏しく濃厚赤血球輸血を行い,いったんショックを離脱した。左下腹部に膨隆を認めたため施行した腹部CTでextravasationを伴う腫瘤を認めた。持続的輸血が必要であったため,止血目的に緊急手術を施行した。恥骨後膀胱前隙(Retzius窩)に760gの血塊を認めた。出血源は明らかに同定できなかった。9日目に独歩退院した。骨折を伴わない軟部組織損傷でショックをきたしうる。とくに高齢者は結合組織が疎なため,容易に軟部組織内大量出血をきたし,予備能の低下から比較的容易にショックに至り遷延し重篤な病態へ移行しうる。

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© 2009 日本臨床救急医学会
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