救急医療を代表する疾患である脳卒中と頭部外傷において,救急医療の質を改善するためには,いわゆる後方連携である回復期リハビリ病棟や維持リハビリ施設,そしてその後の在宅医療を支える介護・福祉などのサポートシステムが整備される必要がある。そのためには医療機関同士に加えて行政の参加が必須である。リハビリ施設の整備が最も遅れていた東京の北多摩南部医療圏において,地域完結型の脳卒中診療態勢を構築した。これは医療機関と行政が協力して成し遂げた社会運動と考えられるもので,その母体は北多摩南部脳卒中ネットワーク研究会である。さらに,多摩地区において,頭部外傷後の高次脳機能障害の診断・リハビリ・社会復帰を支援する体制作りのために多摩高次脳機能障害研究会を設立し,関連医療職者に加えて行政の職員も参加する運動を展開している。これらの社会医療福祉運動は,急性期医療機関の救急医療に携わる医療者の切実な思いが運動の原動力となっている。