2010 年 13 巻 3 号 p. 310-318
背景:徳島県南部II医療圏は,高次医療機関まで陸路1時間以上を要する人口2万余の医療過疎地である。消防防災ヘリの医師ピックアップ方式による搬送体制がH20年8月より開始されたが,利用は月数件にとどまる。目的:ヘリ搬送の需要予測を算出し,ドクターヘリ(DH)導入にむけた基礎的データとする。方法:19年4月から20ヶ月間に地元消防が30分以上かけて搬送した重症例を解析した。また救急隊へのアンケートからヘリ搬送に至らなかった理由を探った。結果:396例の重症例のうち搬送に30分以上要したものは129,このうち日中の搬送例は67。これらがヘリ搬送候補と考えられた。当県の山間へき地人口を約15万人とすると,ヘリ搬送候補は年間300件以上あると算出された。ヘリ要請しなかった理由は,陸路が早いと判断した,オーバートリアージを非難されるのを恐れた,などがあった。結論:医療崩壊の進む地域こそDH導入が必要であり,まず関係者の理解を深めることが重要である。