2012 年 15 巻 3 号 p. 377-381
救急車内でのCardiopulmonary Resuscitation(CPR)は,傷病者の予後に大きく関与する。本研究は,救急車内での胸骨圧迫の質を確保する対策について検討した。救急救命士養成課程大学生10名を対象に,床(床群)とカットモデル救急車(救急車群),カットモデル救急車に足台置き(足台群),それぞれ3分間胸骨圧迫を行い胸骨圧迫の質を評価した。3分間の平均胸骨圧迫回数は,床群300.2±12.5回,救急車群300.3±15.2回,足台群314.9±13.3回で,足台群は床群と救急車群より各々有意に高値を示した(p<0.05)。胸骨圧迫深度は,床群44.8±2.4 mm,救急車群35.6±4.2 mm,足台群43.0±4.0 mmで,胸骨圧迫成功率は,床群95.4±4.1%,救急車群37.7±33.2%,足台群86.7±11.6%で,床群と足台群が各々救急車群より有意に高値を示した(p<0.05)。足台群の足台上面までの高さは19.9±3.9 cmであった。救急車内での胸骨圧迫の質は,床と同様に肘を曲げずに胸骨を垂直に圧迫する姿勢をとることにより向上することが示唆された。救急車内での胸骨圧迫面の高さを調整させる対策が必要である。