日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
スルホニル尿素薬による遷延性低血糖症に酢酸オクトレオチドが著効した1例
斎藤 奈津子冨岡 秀人伊東 剛宮武 諭加瀬 建一小林 健二
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2012 年 15 巻 3 号 p. 446-449

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抄録

症例は34歳女性,うつ病の治療中であった。自宅で唸り声をあげ痙攣し救急搬送された。重度の低血糖を認めたが糖尿病の既往はなかった。中心静脈カテーテルから50%ブドウ糖を持続投与したが,遷延性低血糖の改善はみられなかった。家族が確認したところ,夫のグリメピリド(1錠3mg)25錠がなくなっていた。自殺企図によるグリメピリド過量内服による低血糖と判断し,オクトレオチド100μl皮下注を6時間ごとに開始した。投与後は低血糖発作を認めず,意識レベルは改善し,後遺症なく経過した。この症例では,入院直後より6時間ごとに採血しインスリン/グルコース比を算出した。オクトレオチド投与前はインスリン分泌過剰であったが,投与後は速やかに正常範囲内となり,オクトレオチドが低血糖治療に効果があったことの根拠になりうると考えられた。近年,スルホニル尿素薬による遷延性低血糖症の治療にオクトレオチドが著効した報告があり,若干の文献的考察を加えて報告する。

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© 2012 日本臨床救急医学会
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