日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
当院で経験したバイケイソウ中毒5症例の検討
大谷 義孝高平 修二根本 学
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2012 年 15 巻 6 号 p. 752-755

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抄録

背景:近年,有毒植物の誤食による中毒が増加している。過去2年間でバイケイソウ類による食中毒を5例経験したので,文献的考察を含め報告する。症例:男性4例,女性1例。来院時平均血圧:60.8±13.9mmHg。平均心拍数:53.6± 14.9回/分。心電図所見:Wenckebach Ⅱ型:1例,洞性徐脈:2例,接合部調律:1例,洞調律:1例。経過:全例摂取後1時間以内に悪心・嘔吐を主訴に発症した。5例中4例で血圧低下,徐脈がみられたが硫酸アトロピンおよびカテコールアミンが著効し,来院後,24時間以内に全例循環動態は安定した。考察:バイケイソウ類はオオバギボウシ(別称:ウルイ)と誤認して食され,中毒を起こすが急性中毒から回復すれば予後は良好である。しかし,死亡例も報告されており,緊急および慎重な対応を要する。拮抗薬,解毒薬はなく血圧の低下に対しては,対症療法として硫酸アトロピンおよびカテコールアミンの効果がある。春に集団発生し,食中毒を疑う症例にはバイケイソウ類によるものを考慮し,摂取歴や循環動態などの観察を行い必要があれば入院加療を要すると考える。

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© 2012 日本臨床救急医学会
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